Web標準と通信帯域の節約
前回、Web標準と長期的ROIというタイトルでそのコスト面でのメリットをご紹介しました。Web標準の導入によって期待できるROI(対費用効果)は、決して長期的な運用を通じて初めて得られるものだけではありません。その代表例が、通信帯域の節約です。
レガシーな実装と比較した場合、見栄えのためのマークアップを削減することができますので、それだけ(X)HTMLファイルの容量を軽量化することが可能です。事実、ミツエーリンクスのサイトをWeb標準に準拠した際(2004年4月)には、約1300ファイルを対象に作業した結果、平均約35%の軽量化が確認されました。場合によっては、これよりもっとダイエットできる場合もあるでしょうし、その場合、一層通信帯域を節約することにつながります。
また、CSSをインラインやhead要素内に記述するのではなく、(X)HTML文書とは別のファイルに記述すると、同じスタイルが適用された文書であれば、同一のCSSファイルを参照することになります。キャッシュが利用できる閲覧環境であれば、いちど取り込まれたCSSファイルはダウンロードされずに済みますから、限りある通信帯域を有効に活用できるということがおわかりでしょう。
別の見方をすれば、サーバの負荷を軽減することにもなります。また、高速なダウンロードは閲覧者にとってもメリットとなります。モバイル環境などのナローバンド接続においてすら、ストレスの少ないブラウジングが可能となり、好印象とポジティブなユーザー体験をもたらすことができます。
ここで興味深い記事をご紹介します。サンフランシスコ在住の著名なWebデザイナー、Doug Bowman氏の行った試算です。彼のBlog記事「Throwing Tables Out the Window」において、Microsoft社のサイトをWeb標準に準拠した場合、そのアクセス数などから単純計算すると年間329テラバイトもの帯域を節約できることを紹介しています(MinuteDesignというサイトで日本語訳「テーブルは窓から投げ捨てろ」が公開されています)。
上記の数値はあくまでも試算であり、現実のものではありませんが、たとえわずかな通信帯域の節約であっても「塵も積もれば山となる」の諺のとおり、それは決して無視することのできない効果を生むということです。アクセス数の多い人気サイトであればなおさら、その節約から導かれるROIは大きなものとなるでしょう。