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2010年のWeb標準

2010年12月27日
フロントエンド・エンジニア 矢倉

2010年もあと数日を残すのみとなりました。というわけで、2010年のWeb標準について感じたことをまとめ、来年以降の動きについて考えてみました。

HTML5と周辺技術

2010年は昨年に盛り上がった「HTML5」への注目が、さらに広がった一年であるように思えます。とはいえ、どういった機能があり、どのような展開が見込まれるのかというよい紹介が増えたこともあり、昨年にあった「XHTMLはなくなる」といったような誤解がとても少なくなったのは良かったと感じています。

さらに今年は「HTML5」と括られる技術で構成されたショーケースの登場、スマートフォンの普及もあり、実際のWebアプリケーションでの採用といった出来事が重なりました。これからの基盤技術として「使っていく」技術という認識が固まったのではないでしょうか。今後は「使うこと」にフォーカスした情報が多く出てくるのではないかと思います。

Web標準としてのHTML5と周辺技術ですが、HTML5仕様は仕様を固め来年半ばのLast Callを目指すこともあり、機能の追加などは行われなくなっています。新しい機能は、WebApps WGDevice APIs and Policy WGなどで策定されていることから、今後はこれらのWGから出てくる仕様への注目がさらに高まるでしょう。

CSS

数年来「最終段階にある」と言い続けてきたCSS 2.1ですが、残念ながら2010年中の勧告とはなりませんでした。テストケースによる実装の検証が始まったため、来年は勧告されると思っています。

CSS3については、セレクタ、Colorモジュール、メディアクエリーといった仕様が勧告案/勧告候補となりました。また、Backgrounds & Bordersモジュールも2度目の勧告候補を近くに控えています。ステータスは草案どまりではありますが、Transitions, 2D Transformsなど広く実装され始めた機能も出てきました。CSS3も「今日の」技術になりつつあることを実感させられます。

来年はスナップショットにある仕様の多くが勧告案以上の状態になるため、その他のCSS3仕様の策定が本格化するものと思われます。実装についても、IE9やFirefox 4の登場により相互運用性の向上が見込まれるため、実サイトでの利用も増えるのではないでしょうか。

ブラウザー

昨年に引き続き、各ベンダーがHTML5やCSS3、各種Web API仕様の実装を進めた一年でした。HTML5を冠したショーケースの公開により、HTML5への注目をさらに高めたのではないでしょうか。

とくに、Internet Explorer 9の開発版やベータ版が登場し、HTML5やCSS3への対応を始めたことはとても印象的な出来事であったように思います。ブラウザーの競争が激化する中これらWeb標準への対応は必然であったとはいえ、想像していた以上の機能が実装されており驚きました。

他のブラウザーと比較すると、対応していない仕様もいくつかあります。とはいえ、むしろIE8におけるCSS 2.1や、IE9におけるcanvas, B&Bモジュールのように、他のブラウザーの実装が安定したところでIEが実装を始め、フィードバックによって仕様の安定度が高まるというケースも少なからずあります。相互運用性の確保においては、試験実装を進めるベンダーと、安定した仕様を確実に実装するベンダーふたつの存在がこれからは欠かせなくなるのではと考えています。

さて、ブラウザーのバージョンアップや、iPhone, Android搭載端末の普及により、Web開発で対応を求められるブラウザーは増大しています。「同じ見た目」を提供することについても、JavaScriptで代替手段を提供することによるパフォーマンスの低下など、利用者の不利益という視点で異論が出始めています。

Google Docsが新しい機能についてIE6への対応を打ち切り、Yahoo! Inc.も来年第一四半期にはIE6をX-gradeとし、同様の措置をとることからも、古いブラウザーへの対応について、今後はGraceful Degradationによるアプローチは広がるでしょう。

おわりに

昨年に引き続き、今年も講演や執筆など多くの機会をいただきました。講演については資料を公開していますので、参考にしていただければ幸いです。

2011年もWeb標準Blogをよろしくお願いいたします。