IE Teamのプログラムマネージャが語るIE9とSVG
SVG WGのBlogにて、Team ContactのDoug Schepersと、IE TeamでSenior Program Managerに就くPatrick Denglerの対談が公開されていました。MicrosoftがSVGについて考えていることや、SVG仕様で改善したいところ、検討中のSVG 2.0など面白いトピックが多いので、すこし紹介します。
SVG対応の理由
まずは、DougがPatrickにIE9でのSVG対応について、その理由を尋ねています。
Patrick曰く、MicrosoftはWebの現在とこれからのトレンドについて情報を集めており、製品のプランニングに活かすそうです。IE9のプランニングにおいて、これからのトレンドはグラフィックスと判断し、グラフィックス機能の強化を行うことになったそうです。“GPU-powered HTML5”など、ハードウェアアクセラレーションによる機能強化について盛んに述べていることからも分かりますね。
グラフィックス規格であるSVGも、そういったグラフィックス機能強化のひとつとして検討されたのでしょう。MicrosoftはSVG 1.0の策定には参加しており、その前にVMLをW3C Submissionとして提出することも行っていましたが、これは期待したほど広がりを見せなかったと語っています。しかし、近年HTML5でSVGがtext/html
なHTML文書にも埋め込めるようになったことで開発者からの注目や期待が高まったことなどをふまえ、「SVGが最適な選択肢であり、今がそのときだ」と述べています。
なお、VMLも互換性のためにサポートは続けるとのことですが、VML to SVG Migration Guideという移行ガイドも用意されています。
IE9でサポートしない機能
すでにMIX10のセッションなどで紹介されていますが、IE9はSVG 1.1の機能すべてをサポートするわけではありません。IE9では、SVG 1.1仕様の23モジュールのうち、フィルタ, アニメーション (SMIL), フォント (SVG Fonts)を除く20モジュールがサポート予定とされています。
理由として、SVG 1.1は大きな仕様であることや、ブラウザー間で相互運用性の取れている機能を実装するという方針を挙げています。Dougのフォローアップ記事でも、最初からSVG 1.1をフルサポートするブラウザーはこれまでになく、さらにはどのブラウザーも未だフルサポートに至っていないと書かれています。限定したサポートを最初のバージョンで行うことは、それほどおかしなことではないでしょう。
さて、Patrickは個人的に、SVG FontsはWOFFなどWeb Fonts WGで進んでいる動きなどを踏まえ、引き続き調査は続けるが、今の段階で広がるとは思わないと考えているようです。また、フィルタやアニメーションについては、IE固有のフィルタ機能や、SMILをHTMLに組み込んだHTML+TIMEなどが過去にうまくいかなかったことを紹介しつつ、CSS Transitions, AnimationsなどCSSの表現力が強化され、また少しずつ広まりを見せている現状から、今後の流れがどうなるか静観したいという思いがあるようです。
SVGの改善点やSVG 2.0への期待
SVG WGはSVG 1.1 Second Editionの作業を進めていますが、仕様として古く、また実装や開発において、面倒を解消したり、また単純化したい機能がいくつかあるようです。ほかにも、SVGとCSS, Canvasで重なる視覚効果やアニメーション、APIの重複についても共通化されるといいという意見を述べています。
Doug, Patrickふたりとも、こういった問題を検討中のSVG 2.0では改善したいと考えているようです。グラフィックスの「HTML5」としてSVGが進んでいくのかどうかは定かではありませんが、多くのベンダーが関わり策定にあたる今後が楽しみになってきました。