2009年5月のW3C: XHTML仕様の修正勧告案が撤回に
XHTMLの修正勧告案
5月7日に、XHTML2 WGは4つのXHTML仕様について、その修正勧告案 (Proposed Edited Recommendation) を公開しました。
- XHTML 1.0 - Third Edition
- XHTML 1.1 - Second Edition
- XHTML Basic 1.1 - Second Edition
- XHTML-Print - Second Edition
「修正勧告案」という見慣れない単語が出てきましたが、これは勧告に修正を施し更新する際に、コミュニティからの同意を得るために公開される仕様書を表します。XML 1.0などはこの仕組みを利用して更新されています。
「撤回」された修正案
さて、これらXHTML仕様がすんなり更新されるかと思いきや、5月19日にその修正勧告案が「撤回 (rescinded)」されたと発表されました。
「撤回」という表現もあまり見ないものですが、W3Cのプロセス文書には「勧告された文書に重大な問題などが見つかった場合には、勧告を撤回することができる」という規定があります。
修正勧告案に対しては撤回に関する条項がないのですが、問題があったので修正勧告案としての公開を取り下げたという意図があるのでしょう。
取り下げられた理由については、「仕様の修正や、修正事項の公開が満足に行われていない」というコメントが寄せられたためです。W3Cのプロセスでは、仕様が次の段階へ進むための要件を定義していますが、それを満たせていないということで、今回の撤回が行われました。
不備を減らすためのプロセス
なかなか厳しいように思えるW3Cのプロセスですが、「使える」仕様を作るためには、不備の数は可能な限り減らしてから展開する必要があります。過去のW3Cには不備を減らすプロセスが満足に用意されていなかったため、CSS 2.0やHTML4などが未成熟なかたちで勧告されてしまいました。
現在ではプロセスの改訂が行われており、不十分なかたちで仕様が勧告になることはありません。すでに勧告された古い仕様に対しても、CSS 2.1やHTML5などエラーを修正する大掛かりな取り組みも行われています。XHTMLについてもきちんと修正を行い、より安定したものが公開されるといいですね。
コメント
XHTML Basic 1.1 の修正勧告案を読んでいて気がついたことがありましたので,この記事と直接の関係はありませんがコメントさせていただきます.
XHTML Media Types (Second Edition) の A.19[1]において,table要素の内部では tbody要素を明示するようにと書かれているのですが,XHTML Basic 1.1 が利用している Basic Tables Module[2] では tbody要素が使えないので,このようなケースでは table要素を使わない方がよいのかガイドラインのを満たさなくてもよいのかが不明瞭ではないかと思いました.理由の「table要素の内容モデルは tbody要素を省略することを許容している」という記述も,Basic Tables Module には当てはまらないので若干不正確であると思います.
[1] http://www.w3.org/TR/2009/NOTE-xhtml-media-types-20090116/#C_19
[2] http://www.w3.org/TR/2008/REC-xhtml-modularization-20081008
こういった類の疑問をどこに問い合わせればよいのかわからなかったので (加えて英語もあまり得意ではないので),無作法ではありますが W3Cメンバーのミツエーリンクス様の記事にコメントさせていただきました.
Ikuoさま、コメントありがとうございます。
この件ですが、たしかに分かりにくいですね。私の方からコメントを投げてみました。
私見ではあるのですが、XHTML Media Typesは要件を定めているわけではありませんので、無理に全てを満たそうとする必要はないのではないかと考えています。今回の件についても、XHTML Basic 1.1側の制約によるものなので、仕様の方が優先されるでしょう。