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仕様策定プロセスへの参加

2006年3月22日
フロントエンド・エンジニア 木達

W3Cにおける仕様策定プロセスへの参加方法に関するご質問をいただきました。

昨日、WAOにて、木達さんのセミナーを受講しました。最後の方で、「可能であれば、仕様策定プロセスに積極的に参加(意見があるなら、いうべきですよ)」と言われていたのが印象に残りました。具体的に、どういったアクションの取り方があるのか、ご教授いただければ幸いです。

W3Cの仕様は、W3C会員はもちろんのこと、広く一般の方々からの意見やレビューを募り、コンセンサスを形成しながら策定されます。個々の仕様は、以下の5つの段階を経て最終的な仕様(W3C勧告)となります。

  1. 草案(Working Draft)
  2. 最終草案(Last Call Working Draft)
  3. 勧告候補(Candidate Recommendation)
  4. 勧告案(Proposed Recommendation)
  5. 勧告(Recommendation)

このうち、最初の3つの段階で出される文書(草案、最終草案、勧告候補)については、(W3C会員でなくとも)誰でもレビューを送り仕様に意見を反映させることが可能です。

ですから、W3Cの仕様策定プロセスに一般の立場で参加するには、W3Cのサイトを定期的にチェックしたり、一般も参加可能なメーリングリストに参加して(ただしやりとりは英語)、草案や最終草案、勧告候補の公開をいち早く知る必要があります。そして公開された文書を読解し、レビューを締切までに然るべきアドレス宛に送付するという手続きが必要になります。

具体的な例を挙げてご説明しますと、昨年11月23日にアクセシビリティのガイドラインの一つであるWeb Content Accessibility Guidelines(WCAG)でバージョン2.0の草案が公開されました。同草案のはじめのほうにある「Status of this Document」に、以下に引用するくだりがあります。

Please send your comments by 21 December 2005 to public-comments-wcag20@w3.org. The archives for this list are publicly available. Archives of the WCAG WG mailing list discussions are also publicly available.

翻訳しますと「コメントは同年12月21日までにpublic-comments-wcag20@w3.org宛に(英語で書かれた電子メールで)送ってください。送られた内容は一般に公開されます。WCAGワーキンググループのメーリングリストにおける議論も一般に公開されています。」とあります。同様のくだりが草案、最終草案、勧告候補には必ずあるはずですから、まずはそれを見つけ、締切等を確認してください。

また、質問者の方からは以下のようなご提案もいただきました。

英語だけのリソースや窓口だと、参加しようにも敷居が高くなってしまうことは否めないと思います。たとえば、このWeb標準BlogやmixiのWeb標準 コミュニティが窓口になっていただいて、日本語で、意見を受け付けていただけるような体制を取っていただけたりするとありがたいなとか思うのですが、それは甘えすぎでしょうか。

W3C内での公用語が英語であることにより、参加の敷居が高くなってしまっている点は一理あると思いますし、ご提案の内容は個人的には非常に賛同し得るものです。しかしながら、翻訳精度や言語の違いから生ずるニュアンスの違いによって、W3Cに意見を正確に伝えられない懸念があります。従い、基本的には質問者様ご自身の言葉と責任において、直接伝えていただくことが必須と考えます。

いまひとつの可能性としては、弊社のようなW3C会員企業に所属し、企業内におけるW3C向けの代表者(Advisory Committee Representative、略してAC Repと呼ばれます)を通じて意見を提出する(AC Repに翻訳の肩代わりをお願いする)ことですが、それが実際に可能かどうかは、ケースバイケースではないかと思います。