この文書は、W3C が公開した「Frequently Asked Questions (FAQ) about the future of XHTML」の日本語訳です。

この日本語訳は参考情報です。翻訳において生じた誤りが含まれる可能性があります。

更新日:
2009-07-29
公開日:
2009-07-03
翻訳者:
矢倉 眞隆 <>

W3C | HTML

XHTML の今後に関する FAQ

この文書は、XHTML の今後について寄せられた質問をまとめたものです。W3C が今後どのように XHTML と関わっていくのかを、コミュニティや W3C Member が理解を深められるように作成されました。

XHTML 2 Working Group はどうなりますか?

2007 年 3 月に、W3C は HTML Working Group と、XHTML 2 Working Group という、ふたつのグループを設立しました。この際、私達は XHTML 2 の市場価値などを見ながら、今後について検討すると表明していました。

私達は、何年にもわたる XHTML 2 Working Group の活動と貢献をとても評価しています。しかし、参加者と話した結果、W3C は、2009 年末で失効する XHTML2 WG の憲章を改正しないことを決定しました。

HTML Working Group はどうなりますか?

HTML Working Group は現在の憲章に従い、活動を継続します。W3C は、グループにかける人員リソースの増強を検討しています。また、Michael Smith の活動を HTML WG 一本にすることも考えています。W3C では、HTML WG が今後もコミュニティからの期待にこたえられるよう、最大限の努力をしていきます。

W3C は XHTML について、今後どのように計画していますか?

まず、私達は「XHTML」という言葉を次のように区別しています。

  1. 「XML 構文で表現した HTML」という意味での XHTML
  2. XHTML 1.0, XHTML 1.1, XHTML Basic 1.1, XHTML Modularization などから成る、「XHTML ファミリー」としてのXHTML

このうち、前者の「XHTML」については、HTML5 仕様にてすでに XML 構文が定義されているので、そちらを利用することができます。今後も W3C は HTML 構文と XML 構文というふたつの構文を、HTML WG 内で作業することを続けていきます。よって、次世代の XHTML は HTML5 仕様で定義されることになるでしょう。現在、HTML5 仕様ではこの XML 構文を「XHTML5」と呼称しています。 [HTML 5, section 1.6]

XHTML ファミリー仕様の今後については、この先にあるセクションをご覧ください。

W3C は今後も、HTMLの XML 構文が XML と互換性を持ちづづけることを保証しますか?

はい。

HTMLの XML 構文は、今後も XML 名前空間をサポートしますか?

はい、HTML5 仕様の section 9.1 には「HTML の XML 構文は、運用される状況に関係なく、XML 仕様と XML 名前空間仕様で定義されています。」という記述があります。

しかし、XML 名前空間と分散的な拡張性の関係性について未解決の問題があります。次の質問をご覧ください。

HTML5 はどのように (分散的な) 拡張性を保証しますか?

W3C は (互換性のための) 安定性と、(進化を促す) 柔軟性について、仕様、プロセスの両方でバランスをとるよう勤めています。

HTML5 はいくつかの拡張メカニズムを備えていますが、XML 名前空間で実現される分散的な拡張性を保証するものはありません。つまり、第三者が独自の要素や属性を、名前の衝突なしに取り込むといったことができないのです。

分散的な拡張性に関する HTML WG の issue は現在も未解決のままです。HTML5 の HTML 構文についても、拡張性に関する項目はありますが、分散的という要件を満たしてはいません。

HTML 構文でも XML 構文でも、生成される DOM が同一となるような拡張メカニズムはどのようなものか、という疑問も存在しています(詳しくは HTML 設計指針の section 3.5 をご覧ください)。

W3C はこの件に関してコミュニティと共に解決方法を探すことを検討しており、その一環として TPAC 2009 でパネルを開く予定です。

RDFa はどうなりますか?

RDFa は構造化データを、マークアップ言語に埋め込む仕様です。W3C は 2008 年 10 月に RDFa を勧告として公開し、現在はその普及に努めています。

HTML WG は現時点で RDFa を HTML5 に取り込んでいません。これは、HTML5 で RDFa を表現する仕組みや、またそもそもの必要性など、決定していない事項が多いためです。この件に関しては、コミュニティからのフィードバックを期待しています(ひとつ前の、拡張性に関する質問もご覧ください)。

XHTML2 WG で作業していた仕様はどうなりますか?

いくつかの仕様は、別のグループで継続することが検討されています。

XML Events 2
Forms WG が仕様を引き取る可能性があります。
Role モジュールと Access モジュール
HTML WG が仕様を引き取る可能性があります。
Role モジュールについては、HTML WG の issue 14 および issue 51 もご覧ください。

仕様の移管にあたり、今後数ヶ月にわたって適切なグループに渡すための作業が行われます。移管にあたっては憲章の改訂が必要になる可能性もあります。

活動終了までの期間に、XHTML2 WG は次の仕様の管理に注力します。仕様は修正勧告案のプロセスを通じて改訂が行われます。

これらの仕様には DTD のバグなど、解決すべき問題が多く残っています。解決されていない問題が多かったことにより、上記の仕様の修正勧告案は 2009 年 5 月に一度解除されました。XHTML2 WG はコミュニティと共に、残った問題の解決にあたります。

先述したように、次世代の XHTML は HTML5 仕様での定義が予定されています。このため、W3C は XHTML 1.1, XHTML 1.1 Basic, XHTML Print について、今後の改訂を行う予定はありません。また、XHTML 1.0 仕様については、修正勧告案を通じた改訂も行わない予定です。

次の仕様は、策定が停止されます。これらは Group Note として公開されるでしょう。

Note: RDFa や Role モジュールは、CURIE を利用しています。現時点で、私達は CURIE を単独の仕様として勧告することは考えていません。しかし、RDFa や Role モジュールの作業が進むにあたり、CURIE についても何らかの検討が行われるでしょう。

もしコミュニティが CURIE の仕様について充分な興味をもつことがあれば、ふたたび単独の仕様として勧告へ向けた作業が再開されるかもしれません。

XHTML Modularization は今後どうなりますか?

XHTML Modularization はプロファイルを作成するために作られました。しかし、現時点で、W3C は XHTML Modularization の後継にリソースを割くことは考えていません。アプリケーション開発でスキーマ検証を行いたい方は、W3C XML Schema, Relax NG をはじめとするスキーマ言語があります。

XForms はどうなりますか?

XForms は今後も Forms WG での策定が継続して行われます。普及度合いについては [Wikipedia] や [Implementations] をご覧ください。

製作者向けの HTML5 仕様について検討していますか?

2009 年 6 月時点で、HTML5 仕様書の多くは、ブラウザーベンダーに対して書かれています。これに関し、W3C は製作者向けの HTML5 仕様について多くの要望を受け取っていますが、いまだ未解決という状態です。W3C は製作者向けバージョンについて協力してくれる方を歓迎しています。

しかし、HTML5 仕様には、製作者向け要件のみを表示させる代替スタイルシートが存在しています。代替スタイルシートに対応したブラウザーであれば、メニューより “Author documentation only” を選択することで、実装要件に関する記述を省略して読むことが可能です。


Philippe Le Hegaret and Ian Jacobs
Please address questions to Mike Smith <mike@w3.org> or Philippe Le Hégaret <plh@w3.org>

$Date: 2009/07/02 17:41:10 $