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2011年のWeb標準

2011年12月27日
フロントエンド・エンジニア 矢倉

2011年も残すところあと数日となりました。というわけで、Web標準に関する今年の出来事を簡単ですがまとめてみました。

HTML5のLast Call

5月25日に、HTML5がLast Callとして公開されました。

Last Call期間中には、1500を超えるコメントがバグとして登録されました。

上のエントリでは当時のLast Call後のスケジュールについて触れていますが、その後引き直され、現在は年末までにバグの解決、4月上旬にissueを解決し、次のステップについて発表することになっています。

"Last Call"というラベルではありますが、機能が完成したというわけではありません。他のグループや実装側からのフィードバックによって、仕様には今も大小様々な変更が行われています。

たとえば、Last Call以降、HTML5には次のような機能が追加されました。

WHATWGのHTML仕様では、data要素の導入とtime要素の改定も行われています。

追加だけではなく、分離も行われています。DOM関連では、getElementsByClassName()などいくつかの概念がDOM4に、編集に関わるAPIはHTML Editing APIsUndoManager and DOM Transactionといった別の仕様で定義されるようになっています。

WHATWGのHTML仕様で定義されていたいくつかの機能も、W3Cで協議されるようになりました。

2012年の終わりには勧告候補というスケジュールが考えられているようですが、継続して加えられる変更をどう反映していくかが課題となりそうです。

CSS 2.1勧告、CSS3の前進

CSS 2.1やいくつかのCSS3モジュールが勧告されました。

また、2週間前にはCSS WGの新しいcharterが発行されました。2013年9月末までの活動計画をうかがえます。

期限内には背景&ボーダーモジュールValues & UnitsモジュールBasic UIモジュールの勧告が見込まれているようです。勧告に向け仕様も動き始めており、たとえばUIモジュールでは実装や相互運用性に乏しいappearanceプロパティの削除など、今後のコンテンツ作成に影響しうる大きな変更もあります。

Text, Fonts, Flexbox, Image Valuesについては、勧告候補が見込まれています。多くの機能が実装中ですので、実装状況やテストケースの作成状況によっては、それ以上の段階に進めるのかもしれません。相互運用性に乏しい機能が分離される可能性もあるでしょう。

さて、今年はRegions, Exclusions, Grid Alignmentなど、レイアウトに関する新しい仕様が提案されました。RegionsはAdobeが提案したものですが、Microsoftが賛同しIE10のPlatform Previewに実装されるなど、実装の動きが早く驚かされます。

とはいえ、レイアウトに関する仕様は増える一方で、どう標準化するかを協議している段階でもあります。デバイスの多様化や雑誌・書籍の電子化といった流れから、高機能なレイアウト仕様はこれまで以上に求められています。

SVG 1.1 SE勧告、FXTF

SVG 1.1 Second Editionも改訂作業が完了し、8月に勧告されました。

次期バージョンのSVG 2.0に向けた作業も進み、要件決定事項も増えています。

グラフィックに関しては、SVG 2.0以外にももうひとつ動きがあります。CSSとSVGの両方で利用可能な機能を定義するため、両WGが合同で作業するFXTF (CSS-SVG Effects Task Force)です。FXTFの活動は2年前から始まっていましたが、CSS 2.1, SVG 1.1という大掛かりな改訂作業が終わり、活動が本格化しています。

対象となる機能は、Transforms, Transitions, Animations, Filter Effectsなどが挙げられます。Transformsについては、CSS 2D Transforms, CSS 3D Transforms, SVG Transformsの3仕様がCSS Transforms仕様として統合されることが決定しています。

継続的な変化への対応が課題か

今年はFirefoxがChromeに続きスケジュールベースのリリース方針に移行したことで、新しい機能が早く利用できるようになりました。また、多くのベンダーが比較的安定した開発版を提供し、開発者へのアピールも積極的に行うようになりました。

仕様策定においても、多くの仕様がEditor's Draftを公開し、公式な草案となる前からフィードバックを受け付けています。Editor's Draftは実装者や開発者からのフィードバックが継続的に編集されるため、草案よりも安定しているケースも少なくありません。

こうした流れに、W3Cの現在のプロセスがうまく適応できていないという問題提起も起こっています。W3Cプロセスについて議論するCommunity Groupなども立ち上がり、議論が始まったところです。

継続的に変化する仕様や実装に適応できていないのはプロセスだけでなく、制作側の方針にも言えることでしょう。仕様と実装がお互いを作り替えるいまの流れによって、安定した仕様は求めにくくなっています。コンテンツを制作・提供する側はどれだけ柔軟に変化を受け入れられるか、その方針づくりが課題となるでしょう。

大まかですが、2011年のまとめとさせて頂きます。 2012年もWeb標準Blogをよろしくお願いいたします。