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ズーム機能と文字サイズ変更機能のこれから

2008年10月14日
フロントエンド・エンジニア 矢倉

CSS Zen Gardenの創始者であるDave Sheaが、“Zoom”という記事で、ブラウザーのズーム機能の普及がこれからのWeb制作にどのような影響を及ぼすかを投げかけたことで、活発な議論が行われています。

画像やレイアウトを維持しながらページ全体を拡大するこのズーム機能は、Internet Explorerでは7から、Firefoxでは3から、そしてOperaにはかなり前のバージョンから搭載されています。従来からのテキストサイズ変更機能もIEやFirefoxには残っていますが、現在はズーム機能のほうをプッシュしているようです。Safari(WebKit)では今のところテキストのサイズ変更のみを搭載していますが、開発版ではズーム機能が実装され、デフォルトの挙動として採用されているとのことです。

つまり来年には、どのブラウザーもズーム機能を実装しているものと考えられます。ズーム機能の普及は、Web制作やユーザー体験、そして従来あるテキストの拡大・縮小機能にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

テキストの拡大・縮小機能とズーム機能

テキストの文字サイズ変更機能は、CSSの書き方が悪いページのレイアウトをひどく崩してしまうという問題がありました。ブラウザーのせいではありませんが、ユーザー体験としてはあまりいいものではありません。ページをほぼそのまま拡大し、かつ横スクロールバーを出ないように配慮してくれるズーム機能は、デザイナーにとってもユーザーにとっても良い解決策のように見えます。

しかしながら、テキストのみを拡大するニーズというのも存在するのではないかと考えています。たとえば、一文の単語数や文字数を自分が読みやすいように調整するといったことは、ズーム機能では難しくなっています。また、画像など多いページでは、ズーム機能によって画像も拡大されてしまうため、画像の閉める面積が増えてしまい、テキストがかえって読みづらくなってしまうケースも考えられます。

また、ブラウザーによっては、本文領域がウインドウ幅を超えないように配慮してズームするようになっているものもありますが、すべてのページでこれが機能するわけではありません。本文領域の最大幅を指定しない場合、横スクロールバーが拡大時に現れ、ユーザーが不満をもってしまう懸念もあります。

さらに、各ブラウザーでズームの挙動が微妙に異なるため、ブラウザーごとに対応を迫られるといった手間が発生するかもしれません。また、IE7でズーム機能を利用すると、リンクがズーム前の位置に固定されたままになる場合など、バグも存在しています。

過渡期ということもありますし、ズーム機能にはまだまだ解決すべき問題が眠っているのではないかと感じます。

サイズ変更のインターフェース

近年、「小」「中」「大」といった、文字サイズをJavaScriptによって動的に変更するインターフェースを設けたWebサイトが増えています。アクセシビリティを向上させる対策というものなのでしょうが、一種の「トレンド」として用意されているようにも思えます。

しかし、このようなインターフェースは、ブラウザーが何らかの拡大インターフェースを備えていることにより、そもそも必要ないのではという指摘もあります。このため、「文字サイズを変更するには」といった、ブラウザーの拡大機能を利用するよう促すページを設けているWebサイトも存在します。

小中大ボタンが増えているのは、ブラウザーが持つ拡大・縮小機能へ簡単にアクセスできない、GUI上の問題があるからではないかと考えています。ユーザーが視認しやすい場所にインターフェースを用意することで、拡大・縮小をより身近な機能として認識させることができるのではないでしょうか。