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「Degrade Gracefully」にみるHTML 5の後方互換性

2007年7月13日
フロントエンド・エンジニア 矢倉

HTML 5で新しく追加される要素に関して議論が行われるとき、しばしば「Degrade Gracefully」という言葉が登場します。これはHTML 5の設計指針として重要な概念なのですが、「優雅に退化する」とはどのような意味なのでしょうか。今回はこの言葉が示すHTML 5の互換性に対する取り組みについて簡単に解説します。

ある規格に新しい機能が追加されるとき、既存規格を扱う製品とどう互換性をとるかが問題となります。これはHTMLにおいても同様で、既存のユーザーエージェントに対する互換性への対策は、規格の普及に対し大きな課題となっています。

たとえ新しい要素が使いやすく機能的なものであったとしても、現在のブラウザでまったく機能しないということが起こるのは問題です。このため、HTML 5の新しい要素は、古いブラウザにおいても理にかなった表示や挙動を示すように定義されています。これが「Degrade Gracefully」と呼ばれる概念の大まかな意味です。

たとえば、新しいarticle要素やsection要素は直下にブロックレベル要素のみを許可することで、古いブラウザでも段落の構成を崩すことなく表示することができます。また、canvas要素はimg要素の様に属性ではなく、代替内容を要素内に含む設計になっています。このため、スクリプトなどを使わずに古いブラウザでも代替内容を表示することができます。

もっとも、互換性を考慮した設計が必ずしも設計として洗練されているわけではありません。フォーム関連要素の機能拡張には、「スマートなデザインではない」という意見も出ています。しかし、既存の実装にもある程度の動作保証を行うことで、ユーザーやデザイナー、開発者が払うコストを抑えることができます。

後方互換性への対策により、HTML 5のスムーズな普及をHTMLワーキンググループは目指しています。