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「技術の行く先」とWeb標準

2005年8月19日
フロントエンド・エンジニア 木達

以下のようなご質問をいただきました。

非常に抽象的になりますが、「Webサイトに関する、技術の行く先は何処に行くと思いますか?」あなたなりに見えるモノがあれば、お答えいただきたいです
個人的には、WikiやMTなんかの、現在はシステムごとに縦割りになっているCMSが、次第に進歩しながら、ビルダーなんかのツールを狭い世界に閉じこめると思うのですが…。

一言に「Webサイトに関する」と申しましても、そこに係わる技術としては実に広範に様々な技術があると思います。当Blogは「Web標準Blog」ですから、あくまでもWeb標準を中心として、今後の技術動向につき、やや長期的な予測を(希望的観測を交えつつ)簡単に書き記したいと思います。

まずWebの閲覧環境については、IE7が一層のWeb標準サポートを謳っていることからも推測されるように、今後はより多くのブラウザでWeb標準仕様の適切な解釈が期待できるのではないかと思います。いずれWeb標準の完全なサポートは、ブラウザがブラウザたり得るための必須要件、最低条件となることでしょう。

ご質問のなかで触れられておりますように、Web制作ツール(CMSを含む)も最近はWeb標準志向であり、視覚表現と文書構造を分けて扱うことが当たり前となりつつあります。究極的には、専門知識を持たない(文法に馴染みのない)ユーザであっても、Web標準に準拠したコンテンツをより簡単に制作できるようになると思います。昨今のBlogの流行は、そういった流れを端的に表わしているように感じます。

しかしここで注意しなければならないのは、ツールはあくまでもツールに過ぎず、それを使用する人間の意識もまたWeb標準志向にならなくては、真に優れたコンテンツは制作できないであろう、という点です。仮に(X)HTML仕様を知らずとも文法的に妥当な文書を作成できるツールが登場したとしても、ユーザがその仕様をある程度意識して文書を作成(例:見出しを見出しとして識別し入力)しなくては、適切な情報構造を伴った文書は作成できないのではないか?と思います。

また、これら閲覧環境と制作環境の変化とネットワークインフラの拡充が連動することにより、いつでも・どこでも・誰でも・どのようなデバイスやソフトウェアからでも、Webを利用できるようになることが期待されます。それこそはWebが本来あるべき姿であり、また現在のWebが目指している姿でもあるのではないでしょうか。

なお、閲覧環境のWeb標準志向により、Web標準に準拠したコンテンツ実装にかかる工数やコストは減少すると思われます。たとえば、フルCSS実装を行ううえで目下の大きな頭痛の種は、ターゲットブラウザ間の仕様の解釈の違いやバグの存在です。それらが解消された暁には、実装や検品といった工程を今よりもずっと単純化できます(「CSSハック」の類を使わなければならない場面も無くなるでしょう)。

これは逆に考えますと、同じコストであってもクリエイティブな部分により多くの時間やお金を費やすことができるようになるということです。ユーザに一層強く訴求するためのビジュアルデザイン、利便性を一層高めるアクセシビリティやユーザビリティ、(HTMLソースを弄り回すような小手先のレベルではない)高次のSEO、そして何よりも、ユーザニーズとサイトの目的の双方に合致した質の高いコンテンツが求められるようになるでしょう。

ですから、「技術の行く先は何処に」との問いに対しましては、「コンテンツの質こそが真に問われる時代」というようにお答えしたいと思います。