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2007年2月9日

Meet the Professionals ~ Andy Clarke(前半)公開

フロントエンド・エンジニア 木達

ミツエーリンクスVideocastingにて、Meet the Professionals ~ Andy Clarke(前半)を公開中です。

「Meet the Professionals」は、Webの世界で活躍する各分野のエキスパートにインタビューを行うシリーズです。今回はWeb Standards Project(WaSP)のWebサイトのビジュアルデザインを担当したほか、数々のサイトを通じWeb標準準拠とアクセシビリティ対応を実現してきた、WebデザイナーのAndy Clarkeさんにお話をうかがいました。

Andy氏の個人サイトはすべてのブラウザ向けにfruit.css、さらに条件分岐コメントを用い6以下のバージョンのWindows版Internet Explorer(WinIE)にのみcream.cssというスタイルシートを適用することで、カラフルな世界とモノクロの世界を実現しています。

なお、このインタビューはWeb Directions 06が開催された2006年9月末にシドニーで収録したものです。

木達:Videocastingのインタビューにお越しいただき、ありがとうございます。長いあいだAndyさんのBlogは拝見しており、またオースティンのSXSWでのプレゼンテーションを楽しませていただき、多少はAndyさんのことを存じ上げているのですが、簡単に自己紹介をお願いできますか? Andyさんのお仕事、主にクライアントとはどういうことをされているのか教えてください。

Andy:私は、96年か97年頃から今までWebの仕事をしてきました。98年に独立して自分のデザイン・スタジオを設立しました。このため、クライアントと一緒に仕事をしましたし、宣伝の経験もあります。私は、もともとグラフィック・デザイン畑出身ではありません。自分ひとりで作業をするか、ときには開発者らとともに働き、サイトをデザインしてきましたが、最近、仕事内容の大部分を変えつつあります。かつてクライアントは、Webデザインにまつわる全てのことを私に期待し、ドメイン名、電子メール、そしてWebサイトに関するあらゆることの面倒を見てくれるものと考えていました。しかし、今年の初めに私はそれらのことをやめ、得意であると自負し、また利益をより上げられる分野に集中しようと本腰を入れたのです。それ以外のことやクライアントとのやりとりは、非常に時間がかかるばかりか、サポートに沢山のお金もかかります。このため、今ではデザイン作業、XHTMLやCSSを使ったテンプレートに最も集中しており、ときにはコンテンツマネジメントシステムに触れていますが、とにかくそういう流れで、私の希望ではなくクライアントが望む方向でサイトを作るよう、情報の取り扱いはクライアント側に任せています。

木達:ディレクターのようなものですか?

Andy:ある意味ではそうですね。クライアントとともに仕事をするのは興味深いものです。というのも大抵の場合、クライアント自身何を求めているか具体的に理解していないのです。Webサイトの構築プロセスにおいて、クライアントが何を期待しているか理解していないのは、おそらくこれまでに経験がなかったから、または前のものがお粗末だったから、あるいはWebサイトがどうあるべきか具体的に理解していないためです。あるいは高度なレベルにおいて、実施しておく必要があるかもしれないユーザビリティ調査があるとは思っていなかったり、あるいはWebサイトに何を求めているかを、クライアントに確認しなければならなかったり、ユーザーに聞いてみなければならなかったりするためです。多くの企業は、それを実行していません。

このため私は、クライアントがこのようなことを考えるきっかけを作るために質問をすることで、プロジェクト初期のコンサルティングに多くの時間を費やすようにしています。Webサイトは単なるパンフレットではありません。マーケティング資料の単なる印刷物でもありません。私たちは、ユーザーのことを考える必要があります。私たちは、ユーザーがサイトからどの情報を求めているか考える必要があります。ほとんどのクライアントはそれをやっていない、と言わざるを得ません。ときには、「あなたはWebデザイナーなのだから、全部やってよ」という人さえいます。

木達:なるほど。さて、AndyさんはWebデザイナーとして成功して非常に有名であり、多くの人たちは、AndyさんがWebデザインをどのように、またどこで学んだか関心があります。これまで学んでこられた経緯について簡単に教えていただけますか?また、CSSの初心者が学習する際に何かお薦めはありますか?

Andy:私が本格的にWebの仕事に取り組み始めたのは97年頃ですが、以前の仕事が非常にお粗末だったと、本当の意味で初めて気付いたのは、だいたい2001年の頃です。インターネットについて学習してきたことはすべて、ソースをカット&ペーストし、眺めるなどして吸収しましたし、HTMLやCSSの基礎知識については、実際何も知らなかったのです。たいてい私は、ビジュアル・エディターを使用します。Dreamweaverを使っても、コードビューでは何がどうなっているのか皆目見当がつかず、いつもデザインビューを見ていました。私の初期のコードの一部を今みなさんがもしも見たとしたら、悲鳴を上げますよ。まったく恐ろしいものでした。2001年頃、当時私が関心を持っていたユーザビリティに関するカンファレンスに出席しましたが、講師を務める予定だった担当者が当日病気だったのです。このため、彼の代わりに別の講師が壇上に立ち、私が今まで聞いたことも考えたこともない、アクセシビリティに関するトピックになってしまいました。その講師が良いマークアップ、悪いマークアップ、優れたアクセシビリティの実例を挙げるにつれ、私はそれまでしてきたあらゆることが間違っていたと気付いたのです。

そこで自分のスタジオに戻り、講師のWebサイトにアクセスして、いつもすることをしてみました。HTMLをDreamweaverにコピーして、どのようになるか確認してみたのです。そこで、何がなんだか分からずに口をあんぐり開けてしまいました。レイアウトのためのtable要素がありません。それまで私が一度も使ったことのないdiv要素がありました。空要素タグのスラッシュや、ブレークタグが何であるか知りませんでした。XHTMLとHTMLの違いも知らなかったのです。

私はすっかり面食らいました。その後の6ヶ月はこれを学習し、物事を探求するのに費やしました。当時、本当に優れたリソースはありませんでした。Web上ではBlueRobotLayout Reservoir(レイアウト集)やBox Lessonsなどを見ることができましたし、CSSおよびCSSレイアウトに関するサイトはいくらでもありましたが、それらすべてを一ヶ所にまとめたものはありませんでした。出版されていた書籍はまだ、テーブルをベースにしたレイアウトの本だったため、情報を見つけ出すのは非常に大変でした。そこでA List Apartや、Dave SheaDoug Bowman、そしてJeffrey ZeldmanらのBlogや関連するリソースを読み始め、本当に基礎からすべてを学び始めました。それまで学んできたことをすべて投げ捨てて、ゼロから再出発しなければなりませんでした。

今のみなさんにとっては、やりやすくなったと思います。というのも、本の数も増えましたし、利用できるリソースも増えていますからね。

木達:そうですね。

Andy:ひとつ面白い話をしましょう。私は、それらすべてを吸収するのに約6ヶ月間を費やした後、地元の本屋に出かけました。私が住んでいるところでは、半径50マイル以内に大きな書店は1軒だけ。中に入って、コンピューター・コーナーに行くと、今まで見たこともなかったJeffrey Zeldmanの『Designing with Web Standards(Web標準によるデザイン)』が並んでいたのです。腰を掛けてページをめくるなり、「おぉっ」と声を漏らしました。本に書かれていたすべてのことは、私が吸収してきたことであり、その6ヶ月間で学んできたことだったのです。そこで1冊購入しましたが、教える立場なのに同じ本をもう5冊も持っているというのは恥ずかしいことですから、残りはガーデニング関係などの本の後ろに隠しておきました。同じ分野のライバルに、私が6カ月かかったものが簡単に学習できると教えたくなかったからです。

木達:賢いですね(笑)。

Andy:私は著者のJeffreyにこの話を聞かせましたが、その5冊を気にかけなくても良いほど売れ行きは十分好調だったため、彼は怒りませんでした。今はもちろん、Web標準を理解する新たなデザイナーを育てる必要があり、仕事を適切にこなしていくことを広めなければならず、事情が違います。今では、デザイナーがCSSを学ぶためのリソースも場所も増えました。私は、Simon Collisonが書いた「Beginning CSS」という本の序文を書き終えたところですが、この本はApress社の出版する非常に素晴らしい本です。Simonは、この本に非常に熱心に取り組んでいました。単なる基本的なCSS解説本ではありません。つまり CSSに関するアンソロジーのようなもので、すべてが網羅されています。私は本書と、Blogを読んだり、この分野で活躍している人々の作品を見て、メーリングリストや関連トピックについてのフォーラムに参加することをお薦めします。いつでも、皆さんが問題にぶつかったときに喜んで手をさしのべてくれる人がいますから、これらの活動すべてに参加することを強く推奨します。

木達:なるほど。さて、次の質問です。SXSWでAndyさんは、Webデザインのスーパーヒーローになる方法と、いくつかのヒントやアイディアを発表されました。Andyさんの場合は、成功を握るカギとなったものは何ですか?

Andy:あのプレゼンテーションは楽しいものでした。発表を心から楽しむことができました。愉快なものにする予定でしたが、その裏には重要なメッセージがありました。私はラッキーでした。というのも、Web標準に携わるようになってまだ日が浅いですし、Blogを書き始めたのは2004年というごく最近ですから。

私は、ディズニーストアやWWF(世界自然保護基金)などのプロジェクトに携わることができて幸運だったと思っています。これらのサイトを両方ともデザインし、「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」や「British Heart Foundation(イギリス心臓病支援基金)」向けにもデザインをしました。これらのサイトで仕事をすることができたのは非常に幸運でした。名前のブランドのおかげで、私は人々がこれらのサイトを訪れるだろうと思いましたし、この種の組織がWeb標準ベースのサイトを構築することができたら、と考えました。そして……。

これらのサイトが私の個人サイトに多くの人を導いてくれたと思います。もしもDouglas BowmanやDave Shea、あるいはMollyEric Meyer、その他の情報を共有してくれる人々がいなかったら、私が吸収したことすべてを学ぶことはできなかっただろうと思っているので、情報を共有するという発想を常に重視しています。そういうわけで、人が何かを学ぶ、または何かを発見する、あるいは何かについて意見をもった場合、それを共有することが重要だとする考え方を私は熱心に支持してきました。

人が常にあなたと同じ意見を持っているとは限りませんが、それは問題ありません。私は、周囲の人々が関心を寄せてくれるまでになったことをラッキーだと思っています。毎朝起きると、たとえば非常に忙しくて何も更新しなかった過去3週間などは特にそうですが、なぜ人々が私のサイトを訪れてくれるのか、今でも不思議に思っていますが。

希望的観測によれば、人々はつねに学習することに興味を持っているのだと思います。情報を手に入れたり、アイディアを共有できたりすれば、あらかじめ存在していたのとは異なる、新たなパーソナリティが生まれることになりますからね。

SXSWの初年度に出かけて、Dave Sheaを神様のような存在として見ていたことを覚えています。「うわぁ、あのZen GardenのDave Sheaだ!」と思ったのです。そして、Dan Cederholm、Doug Bowmanといった著名な人々。そして直ちに、皆がごく普通の人間であること、その多くは自営業者であり、たいてい大企業には勤めていないことがわかりました。Web標準という分野全体が、情報を共有する個人に強く依存して展開されているというのは、非常に興味深いことです。つまり、これがひとつの要因だと思うのです。私は自分を成功者だとは思いません。恐ろしいほど成功しているとは思いませんから。ただ、情報を共有しなかった場合と比べれば、ある意味有名になったことは間違いありません。

木達:わかりました。次の質問です。Andyさんの書かれた、イギリスのディズニーストアに関する記事を覚えています。そのeコマースのWebサイトは一時期、Web標準に準拠しましたが長くは続かず、テーブルベースのレイアウトに戻りました。似たような状況は日本のWebサイトにもありました。そこで、Web標準に準拠した状態を維持することについて、意見や提案などお持ちですか?

Andy:とても面白い質問です。イギリスのディズニーストアのサイトは、当時多くの人の注目を集めました。興味深いことに、私がサイトをデザインしましたが、物流業者の選択したeコマース用コンテンツマネジメントシステムとともに展開されたものでした。ディズニーのような多くの大企業は、顧客に送るミッキー・マウスであふれた倉庫を持っていません。Webサイト上で受注し顧客に出荷し、返品やクレジット・カードのすべてを取り扱う別の企業に支払いをしています。たとえば、それらのことはイギリスのディズニーが担当するものではなく、サービスについて支払いを受ける企業が担当することです。そして、サイトのデザインは私が担当しましたが、当時ディズニーと直接ではなく、物流業者と取り組んでいた点が非常に興味深かったのです。Web標準に準拠にしてサイトを構築したことは偶然でした。アクセスのしやすいサイトやWeb標準準拠が求められていたわけではありません。結果としてそうなったのは、私の会社に仕事を依頼したからです。もしも私の隣の部屋の人に仕事を依頼していたら、このようなことにはならなかったかもしれませんし、結局違いに気付かなかったかもしれません。彼らはWeb標準やアクセシビリティに関するあらゆる話題について知識がなかったのです。皆目見当がつかなかったわけです。

デザインのプロセス全体を通じて私は、クライアントが実用性を志向しているであろういくつかの点を説明し、彼らとともに懸命に取り組みました。サイトのビジュアルデザインは、アクセシビリティやWeb標準の必要性によって妥協されることはありませんでした。しかし、彼らはすべてのリンクを新規ウィンドウで表示したがったため、私たちは一生懸命、それが優れたアイディアではないことを説明し、ユーザーがそうしたいかどうか選ばせるようにするソリューションに取り組みました。つまり、新規ウィンドウで表示するかどうかを選択できるようにしたわけです。

プロセス全体を通して、私はディズニーおよび物流業者の人々と作業し、私の考える「仕事を適切に進めること」を説明したため、大きな成功を収めました。私の意見では、ディズニーが広告代理店を乗り換えて、異なるサプライヤーとの提携を決定するまで、サイトは外観に優れ、Web開発コミュニティで高い評価を幅広く受けました。私たちのクライアントはそもそもディズニーではなかったため、ディズニーが決定をすべて覆した際、すべてが変更となりました。新たなWebサイトができ、新たなバックエンド・ソリューションが用意されました。あらゆるものが変更されたのです。この特殊な事例において、ディズニーの担当者は興味深いことに、デザイナーに対し「私たちは、Web標準とアクセシビリティを維持するつもりだ」と述べ、またデザイナーは「ええ、私たちはそうするつもりです」と言ったそうです。しかし、新たなデザイナーはWeb標準の重要性を認識しておらず、サイトを担当した会社の方針は好ましくない、古い方法でした。レイアウトのためのテーブルがあふれ、fontタグやスペーサーGIF画像が沢山盛り込まれ、極めて悲惨なWebサイトとなり、特殊なニーズを持つ人にとっては完全にアクセシビリティが欠如していました。ディズニーは、自社を弁護するため、サイトでアクセシビリティを維持することができるかを尋ねたが、開発者らに嘘をつかれたのだ、と言っています。

キーポイントは次の点だと思うのです。クライアントが求めているものを理解している場合、たとえばハイレベルのアクセシビリティを求めているといった場合、そしてWebデザイナーまたは開発者に対し「これが私の求めているものです」と伝える際、彼らがどのように判断するかということです。彼らはどのようにして「仕事をうまくやり遂げた」と知ることができるのでしょうか?現時点で私が思う、より大規模な組織に見られることのひとつとして、企業に勤める多くの熱心な個人がWeb標準に関する課題を取り上げ、標準ベースのサイトを作り始めていることが挙げられます。しかし、彼らが退社して別の企業に移ったり、Web標準の採用が経営層による決定事項ではない場合、結局進めてきたことはかつてあった古いスタイルに逆戻りしてしまう可能性が高くなります。

思うに今後重要な要素のひとつは、こうしたより大規模な組織において、私たちはマネージャーや政策担当者、意思決定者に照準を定めて、これらの決定の重要性を理解させる必要がある点です。今までは会社や団体(たとえばBBCなど)に属する、Web標準に対し非常に熱心である一方、マネージャーや会社の構造の都合上それを実現するのが難しいという環境におかれた少数の開発者やデザイナーが行っていた草の根運動に重点を置いていましたが。

木達:つまりAndyさんの意見では、コードを記述するといった実際に作業する立場とは異なる層に訴求をし、Web標準がアクセシビリティに役立つようにする、ということでしょうか?

Andy:そうです。私は、それらがどれだけ重要かをマネージャーが理解することは非常に重要だと考えています。

木達:Webサイトの方向性を決定するのは彼らですからね。

Andy:私がもうひとつ重要だと思う点は、それがたとえばGoogleYahoo!AmazoneBayMySpaceなどの大組織に限らず、どの組織でもいえるということです。組織内部のマネージャーや意思決定者は、技術的な観点からではなく、Web標準やアクセシビリティの重要性を理解する必要があります。それらの話題に高い関心を寄せているデザイナーや開発者らの話し方は、非常に技術的になることが多く、当惑させるものになることがあります。

自分がWeb標準ベースやアクセシビリティの高いサイトを考えていないために、蚊帳の外におかれていると感じたり、攻撃の的にされていると考えたりしている場合、実際に攻撃されていると感じる人や、傷つけられたと感じる人もいることでしょう。それは本来あるべき姿ではありません。Web標準やアクセシビリティが、これまでよりも重要性を増してきた、というポリシーの合意に至らなければならないと思います。