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2006年12月18日

Molly E. Holzschlag氏インタビュー(後半)公開

フロントエンド・エンジニア 木達

ミツエーリンクスVideocastingにて、Meet the Professionals ~ Molly E. Holzschlag (後半)を公開しました。

「Meet the Professionals」は、Webの世界で活躍する各分野のエキスパートにインタビューを行うシリーズです。今回はWeb Standards Project(WaSP)の現リーダーであり、精力的にWeb標準の普及/啓蒙活動を行っている、Molly E. Holzschlagさんにお話をうかがいました。前半ではWaSPの活動についてうかがいましたが、後半ではW3Cでの活動や、WebおよびWeb標準への今後に対する希望などをうかがっています。

なお、このインタビューはWeb Directions 06が開催された9月末にシドニーで収録したものです。

木達:では、次の質問に移らせてください。456 Berea StreetのRoger Johansson氏がVitaminに、Web標準の認知度がまだまだ低すぎるので、その重要性について引続き声高に主張していく必要があるといった趣旨の記事を書きましたよね。その内容についてどう思いますか?Web標準は、まだ主流ではないのでしょうか?

Molly:私はRoger氏の意見に100%賛成です。彼は非常によい点を指摘していると思いますし、Web Directionsの期間中にいろいろなスピーカーが数回にわったて、私たちはWebの世界において少数派であり、特定の情報がそれを必要としている人々の働いている現場まで届いていないことを指摘していました。それだけではありません、地域による偏りも見られます。

ノウハウがすぐに定着する、もしくは何らかの理由でもって定着することの可能な国や地域があります。そうした国々では、私たちの考え方が理解されやすいのだと思います。たとえば、私たちは米国には多くのリソースを持っています。ここオーストラリアでは、人々が非常に熱心にWeb標準に取り組んでいます。イギリスでも人々がWeb標準に熱心に取り組んでいます。それでも我々は、全体では少数派なのです。

メッセージがまだ人々の耳に届いていないという意見に、私も大きく賛成ですが、問題の一部は教育による知識であり、認識であり、アウトリーチであり、人々にメッセージを届けることであると考えています。それもメッセージをただ届けるのではなく、どのように届けるかを考えるべきだと思うのです。それが学習曲線なのです。この仕事を私たちが今、やろうとしている方法でやり遂げるためには、人々の仕事の進め方や物の考え方を変えなくてはなりません。これは非常に骨の折れる作業ですし、時間もかかります。

これまで私たちは長い道のりを歩んできました。私たちはメッセージを広く世間に伝えてきたと自負しています。多くの地域で、もはやWeb標準に異を唱えられることはありません。今度は、詳しい内容を教育していく段階にきています。世界の多くの地域では、まだWeb標準に対する意見が依然としてまちまちであることは理解しています。任務が完了したというにはまだ程遠いのです。

木達:W3Cのメンバーのお一人としても活躍していますね。言うまでもなく、W3CもWeb標準にとって非常に重要な組織のひとつです。W3Cでの立場やW3Cでの仕事について、お話を聞かせいただけますか?

Molly:W3Cで私は現在、三つの異なる仕事についています。HTMLのワーキンググループに属していますし、GEO、つまりガイドライン・教育・アウトリーチの国際化を目標としているグループのメンバーでもあります。ここでの私の仕事といっても、具体的には、普段と全く変わりません:カンファレンスに参加し、とくに国際化について人々の認識を促し、世界各地を飛び回ってほかの人々がWebサイトをどのように使用しているか見て回り、その情報をW3Cに持ち帰ります。

国際化の問題に関してはかなり把握できているように思いますし、さらに学ぶべく努力を続けています。様々な国々で、国際化やローカリゼーションなどに関する知識がどのように浸透してきているかなどについても学ぶようにしています。HTMLのワーキンググループには最近、メンバーとして加わったばかりですので、それほど深くはかかわっていません。

このグループは現在、活動のペースが非常に落ちているといってよいでしょう。我々の関心がモバイルのほうに集中しているためです。我々はモバイル向けにXHTML Mobile Profileを公開していますし、XHTML-Printをちょうど公開したところです。ご存知かどうか分かりませんが、これはXHTML文書の印刷に関する仕様のことです。これを今週、公開したばかりです。

W3Cで今私がしている仕事のなかで最も重要なことは、コミュニケーションチームのディレクターであるIan Jacobs氏の傍で働いているということでしょう。WaSPが戦略面で問題を抱えているのと同じように、W3C はインフラ面で非常に大きな問題を抱えています。W3Cの提唱するインフラが問題視されるようになってきており、かつての影響力が失われているのです。

今、実際に行われていることは、W3Cのゴールとは何か、どのようにしてアウトリーチを提供していくのか、私たちを必要としているコミュニティにどのように手を貸していくのかといったことの再検討です。つまり、よりユーザーフレンドリーなものにサイトのデザインを直したり、現在の技術やベストプラクティスにより歩調を合わせていくというようなことです。もっと分かりやすい文書を作成していくということです。

木達:大切なことですね。

Molly:ええ、とても大切なことですし、実行するのが難しいことでもあります。そして一番重要なことは、ただメンバーを増やすというよりも、もっと多くの専門家を招き入れるということです・・・。

木達:たとえば、Andyのような?

Molly:Andy や私自身のように現実社会で仕事を持っている人でしょうね。科学者だけで科学はできません。実際に仕事に携わっている人々から情報を得て、科学に対するニーズを知る必要があるからです。

主に技術主導のアプローチにより仕様を定めてきたW3Cは、Webを使って実際に働いている人々との間にこれまであまりよい関係を築いてきませんでした。そこで、より多くの専門家を招き入れれば、本当のニーズが何であるかを理解する実務経験のある人々を呼び込むことができると考えています。W3Cは重要な時期にさしかかっているのだと思います。大きく変わることができなければ、存続そのものも危ういかもしれません。

木達:なるほど。Eric Meyer氏が、自身のブログにこれまで3つの提案を挙げていましたね。私は彼の最初の提案であったアウトリーチの話が一番興味深いと思います。おそらくW3Cは、Web標準がいかに素晴しい考えであるかを人々に広め、教える努力を少々欠いているのではないでしょうか。私のささやかな意見に過ぎませんが。あなたはEric氏と同じような意見ですか?

Molly:全くそのとおりです。Eric氏と私はこの件について全く同意見です。Eric氏のアイデアは、多くの問題を本当の意味で解決するうえで、私が知っているなかでもおそらく最も優れた考え方のひとつだと思います。たとえば、メンバーシップという仕組みを廃止するといったようなことです。組織の財務面やインフラ面、そしてもちろんアウトリーチの在り方をどのように改善すべきか、彼は非常に優れた見識を持っていると思います。

W3Cはそもそもこうしたことを意図して設立されたものではないのですから、これは面白いことですよ。Web Standards Projectのようなグループが登場した本当の理由もこういうことにあります。W3Cはこれまで常にWebの学究的、科学的機関として仕様や提案を考えてきましたが、一般の人々や世界にそれを広めるための仕組みをチャーターに掲げていたかというと、必ずしもそうとは言えませんでした。

ほとんどがブラウザやDreamweaverのような制作ツールを作っているメーカー、ソフトウェアベンダを対象としたものでした。ですからMicrosoftやAdobeから大勢のメンバーが参加しているのです。彼らはみな一様に課題を抱えており、実際にWebに携わる仕事をしている専門家にとって、それは必要な声のはずです。W3Cがこれまでその意味を真剣に考えてこなかった、架け橋としての役割がまさにそこにあるのだと思います。これまでアウトリーチが足りなかったのですが、彼らはそれに気づいています。現在ではそこに焦点をあて、どのような方法が最も適しているのか検討することが、W3Cの今の課題の重要な部分を占めるようになっています。全くあなたの意見に同感です。

私は、アウトリーチが最も基本的なことだと思っています。私たちにはW3Cが持っている権威が必要です。W3Cには権威があります。W3Cの権威をなくして私たちの仕事について語り、開発者、デザイナー、メーカー、ソフトウェア開発者全般に対してWeb標準を推奨してもあまり役に立たないでしょう。ですからW3Cは、この問題を本当に解決しなければならないのです。

唯一、私が評価したいと思っているワーキンググループは、Richard Ishida氏がリーダーを務めている国際化ワーキンググループです。もちろん、W3Cは大きな組織ですし、その中での私の経験に基づいた意見にすぎませんが、彼こそは唯一、本当の意味で人々へのアウトリーチという機会の大半を作ったと思っています。W3Cの国際化のリソースを非常に利用しやすいものとするために。

興味深いことに、国際化の領域で起きていることを書いた記事やそういった類のものを見ると、より親しみやすく書かれています。彼はグループのメンバーに世界各地で話して回ったりするよう奨励しています。アウトリーチという意味では、彼はとても素晴しい仕事をしているのです

木達:彼は時々、Web Standards Groupメーリングリストに投稿していますね。

Molly:ええ。

木達:より多くの人々に声を届け、ときには彼らを教え諭すためですね。

Molly:そういう意味では、彼は本当に情熱をもって取り組んでいます。私が彼を立派だと思っている理由のひとつがそれです。彼がW3Cにおいて私にとってのリーダーを務めてくれていることに本当に感謝しています。私は、彼を本当の意味で力になってくれる非常に大事な人物だと思っています。彼の在り方は非常によい例ですし、W3Cには彼のような人物、もしくはアウトリーチにおける我々のやり方について彼を手本としてくれるような人物がもっと必要なのです。

木達:それでは、これが最後の質問になります。

Molly:分かりました。

木達:WebもしくはWeb標準の将来にどのようなことを期待されますか?考えをお聞かせください。

Molly:私は常にWebが世の中をより良くするための手段として使われることを期待してきました。去年、Jeffrey Veen氏がスピーチを行ったときにあなたもそこにいましたね。彼はサイト上に「干草があります」そして「干草が必要です」と掲載してあるWebサイトを見せてくれました。私はいつも思うのです。あれほどに鮮やかにWebの可能性について言い表したものはないと。

たとえば、私が食料の豊富に余っている国に住んでいるとします。人々は「食料があります」と言うでしょう。食料を必要としている国々があれば、私たちはWebを介してより効率的かつ効果的に自分たちのリソースを活用することができるでしょう。他のものでも同じです。人材もそうですし、食料も、情報資源、教育、ビジネス、貿易も。我々の生活のあらゆる面に適応できます。

私が関心を持っているもの、そしてWeb標準について本当に興味がある部分で作りたいと思っているものは、Webをもっとしっかりとしたインフラにし、素晴しいコミュニケーションの道具として成長させて行くことです。ライフスタイルを高めるばかりでなく、人類をより優れた存在とするのに役立ち、グローバルなコミュニケーションを改善して、この世界を誰にとってもより良いものにしたいと思うのです。

木達:ありがとうございます。お越しいただきありがとうございました。

Molly:ありがとう。